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シジミの陸上飼育施設の水槽等設置と現地説明が行われました
シジミの陸上飼育試験のためのハウス建設工事が始まったことを7月27日にお知らせしていましたが、このほどハウスが完成し、8月28日(水)にシジミの産卵、ふ化、飼育のための水槽等の設置とこれに併せて報道関係者等に対する現地事業説明会が行われましたので、私も出かけて行って、作業の様子を見学しました。
この事業は、これまで社内で陸上でのシジミ飼育実験を続けてきていた大福工業、高濃度酸素水供給・水質管理技術を有する松江土建、堅牢で安価な農業用ハウス建設の技術を有する株式会社フクダの地元企業三社に、宍道湖のシジミについて豊富な知識を有する宍道湖漁協斐川漁業会が加わり、それぞれの得意分野の知識、技術を持ち寄り、一緒になって事業実施組織を作り、出雲市を通じて財団法人地域総合整備財団の地域試験開発補助金を得て、取り組んでいるものです。
場所は、私たちの住んでいる松江分地区の十四間川左岸河口部付近にあり、宍道湖の水を引いてシジミを飼育するのに最適の場所です。
具体的な研究事業の内容としては、宍道湖のヤマトシジミの陸上飼育技術の確立という研究テーマの下、農業用ハウスの中に設けた水槽で、県外の企業が有するヤマトシジミや他の二枚貝の飼育、養殖に関する技術をもとに、地元松江・出雲が有するヤマトシジミに関する様々なノウハウ(シジミの生態、水温、塩分濃度や酸素濃度量等)を加えて、宍道湖産のヤマトシジミのふ化から成長まで一貫して行い、成長が早く、良質なヤマトシジミの陸上飼育技術の確立を目指しているということです。そして、陸上での成貝までの飼育だけではなく、飼育した稚貝を宍道湖に還元することで、シジミ漁というこの地域の重要な産業の活性化にも寄与したいとのことです。
さらに、シジミの陸上飼育技術の確立だけではなく、ヤマトシジミを使った新しい健康食品の開発やシジミの貝殻に含まれるアラゴナイトと呼ばれる物質の利用など貝殻の有効活用についても同時に研究を進めていくとのことです。
計画では、今週中にすべての水槽に十四間川の水と水温調整のための地下水を供給するための配管や酸素供給装置の接続等の作業を終え、来週には宍道湖漁協斐川漁業会によって宍道湖・十四間川で採取されたシジミの親貝が入れられ、さっそくシジミの人工授精に取り掛かるとのことです。
長らく日本一の水揚げ高を誇っていた宍道湖のシジミも、漁獲量が激減し、ここ2年ほどは青森県十三湖に日本一の座を譲ってしまいました。今年はやや持ち直したという調査結果が公表されましたが、依然として厳しい状況に変わりないようです。是非ここでの研究が成功して、日本一の宍道湖のシジミが復活してほしいものと、地元の者として我々松江分自然環境倶楽部もこの取り組みを見守り、応援していきたいと思います。
第3回環境講演会を開催しました
8月18日(日)午前10時から、松江分研修センターにおいて、環境講演会を開催いたしました。
この講演会は、公益財団法人しまね自然と環境財団の環境保全活動助成金をいただいて、平成23年から毎年8月に開催しており、今年で第3回目を迎えました。
松江分自然環境倶楽部では、倶楽部設立以来、地域住民の安全と暮らしを守っている十四間川堤防の毎月の漏水調査やヨシの植栽活動を実施し、また、今年からはヨシ植栽場所に漂着するゴミの回収を行うなど、十四間川の堤防と湖水環境を守るためのさまざまな取り組みを行ってきています。この講演会も、そうした活動の一環として、自分たちの住んでいる地域の成り立ちや自然、あるいは環境問題についてみんなで学んでいくことを目的として開催しているものです。
第3回目となる今回は、野鳥の宝庫でもある宍道湖にやってくる水鳥の種類や生態、出雲平野、中海、宍道湖の成り立ち、宍道湖南岸から産出し、伝統工芸品出雲石灯籠として有名な来待石の特徴や新しい利用法などについて、3人の専門家からお話しをしていただきました。
最初に、公益財団法人ホシザキグリーン財団事業課長の森茂晃氏から、「宍道湖西岸の水鳥」について講演をいただきました。
森氏は、宍道湖西岸域に生息するカモ類やガン・ハクチョウ類、シギ・チドリ類や斐伊川・神戸川水系のヤマセミの繁殖実態調査、海鳥の油汚染調査など地域の鳥類の生息状況に関する調査、研究のほか、最近では、砂浜海岸で繁殖するシロチドリの生息数に注目した研究や島根県のレッドデータブック掲載種の生息実態調査に取り組んでおられ、講演では、こうした豊富な調査研究に基づいて、宍道湖西岸でみられる多くの鳥たちの種類や生態について、わかりやすくお話をいただきました。
宍道湖周辺では、約240種の鳥が確認されており、そのうちきわめて稀なものを除いても、約160種もの多種類の鳥を身近に見ることができること、そして十四間川ではカモだけでも15種類程度を見ることができることやヨシやガマなどの水草や水田に営巣するバンが減少し、代わって20年位前には少なかった水面を泳いだり潜水したりして藻や甲殻類を食べるオオバンが増加してきていることなど、十四間川周辺にみられる鳥類について興味深い話がありました。
続いて、大福工業株式会社環境部出雲環境技術センター研究員で、同社において島根県産ゼオライトの有効利用について研究をしておられる五石由美氏から「来待石のミクロな世界」と題し、宍道、来待周辺の地質、ゼオライトを多く含む来待石がどのようにしてできたのか、来待石の組織、構成する鉱物などについて、講演をいただきました。
火山のマグマが地層深部で徐々に冷えて固まった花崗岩が風化し、砂粒大となったものと長石や石英の破片、これらの間を埋めるように存在するゼオライト(噴火により地下のマグマが上昇する際にガスの発泡により液体のマグマが粉砕され、微粒子となった火山ガラスが熱等により変性したもの)が堆積し、圧力によって石(堆積岩)となったものが来待石であり、中に含まれるゼオライトの吸着効果に着目した水質浄化等への活用も注目されていることなどが紹介されました。
そして、最後に、認定NPO法人自然再生センター理事長でモニュメントミュージアム来待ストーン館長でもある島根大学名誉教授徳岡隆夫氏から、「来待石の秘密‐生い立ちと魅力を探る‐」と題してお話をいただきました。
徳岡先生は、地質学が専門で、島根大学総合理工学部教授を退官後、認定NPO法人自然再生センターを立ち上げられ、宍道湖、中海などの汽水域の研究を続けられるとともに、中海・宍道湖の自然再生と環境保全に取り組んでおられ、松江分自然環境倶楽部設立以来様々な面でご指導、ご支援をいただいており、この講演会も3回連続でお話をいただくことになります。
徳岡先生からは、最初に地球が誕生した約46億年前から現在に至るまでの地殻や気候の変動、生物の進化や盛衰の歴史について話があり、地球の歴史を1年の暦に表すと、ヒトが文明をもったのは、高々最後の1分間に過ぎず、現在地球上に暮らす人類が何をしてもよいということではなく、大きな視点で、現在や将来の地球環境を考える必要があるとの話があり、次いで、約11,000年前から現在までの斐伊川下流域、宍道湖、中海の地形の変遷について、図に基づき詳しく説明があり、宍道湖南の火山の活動によって、南岸部に花崗岩が風化堆積して生じた砂岩の来待石が堆積し、対岸の松江市大野町辺りにはもっと細かい粒子が運ばれて堆積してできた泥岩からなっていること、来待石は、石灯篭や狛犬などの工芸製品によく使われているが、ゼオライトをたくさん含むことからもっと多面的な利用が可能となり、現在様々な利用方法が検討されていること、今は利用されていない来待石層の下部にある白来待石の層は、100%近いゼオライトが含まれているものもあり、ゼオライトを利用するには大変有効なものであることなどの話がありました。
この後、質問、意見交換が行われ、来待石の性質や宍道湖の水鳥の増加と餌となる水草の関係、シジミを食べる水鳥がいるのかなどについて活発な質問等があり、予定時間を30以上も超過して講演会を終了しました。
なお、当日の講演内容等の詳細は、機関誌「葦の原」でお伝えする予定です。
2013年8月の漏水調査の報告
調査日時
2013 年(平成 25 年)8月11日(日) 午前8 時
天候
晴れ
調査結果
十四間川水位 83cm(前月:79cm)
漏水量 調査地点1 2,700ml/分(前月:3,800ml/分)
調査地点2 600ml/分(前月:1,000ml/分)
調査地点3 900ml/分(前月:1,200ml/分)
調査地点4 300ml/分(前月:400ml/分)
8月の漏水調査を11日(日)午前8時から行いました。連日の猛暑のなかでも雑草だけは元気で、6月にきれいに刈った堤防も元のとおり草に覆われてしまい、漏水調査も大変です。
十四間川の水位は、83cmと依然高い値を保っていて、船着き場が冠水することが増えてきています。
漏水の状況は、先月に比べると減少しました。前年に比べて、調査地点3の漏水量が多いのが少し気になります。
2011年1月以降の漏水調査データは、以下に掲載していますので、併せてご覧ください。(クリックすると別にウィンドウが開き、グラフが表示されます。)