シジミの陸上飼育試験続報

  大福工業(株)、(株)フクダ、松江土建(株)の地元企業三社と宍道湖漁協斐川漁業会が十四間川河口付近の松江分地区内で行っているシジミの陸上飼育試験の続報です。

  9月4日(水)、シジミの人工授精の作業が行われ、その模様を見学しました。

  台風17号の影響で夜半からの雨が止み間なく降り続く中、朝8時前には現地のシジミ飼育ハウスに、シジミの飼育を担当する大福工業の社員と作業をサポートする多数の斐川漁業会、松江土建、フクダの関係者が集まり、作業が開始されました。

  人工授精に使用するシジミは、斐川漁業会によって十四間川で掻かれたもので、宍道湖での産卵期間の終わりにさしかかっていることから、前日に松江分研修センターにおいて精子、卵子があるかどうか顕微鏡を用いて確認が行われた後、ヤマトシジミ種苗生産マニュアルに従って、10度程度で冷蔵されていたものです。

  受精作業は、まずどの程度の塩分濃度が最適なのかを調べるため、十四間川から汲んだ水を5psu(Practical Salinity Unitの略で、実用塩分単位ともいわれる。1psuは、濃度約0.1%)から11psuの4段階に調整したバットを用意し、そこにシジミを入れて、水温が放卵、放精に最適とされる28度前後に保たれました。この後、この結果をもとに人工授精に最適な塩分濃度を決定して、本格的に人工授精を行い、得られた種苗を飼育水槽に移す計画とのことです。

  産卵は、水温が適温になった後、まずミルク色をした精子の放出が始まり、次いで黄色みがかった卵子の放出が行われるとのことで、ヒーターによって水温が28度前後に保たれた後、この瞬間を見ようと試験担当者、斐川漁業会関係者らがバットを取り囲みました。早ければ30分~1時間程度で放精が始まるとされ、場合によっては数時間かかる場合もあるということであり、私も午前中いっぱい粘って見つめていましたが、残念ながら放精の瞬間を見ることは叶わず、ハウスを後にしました。

  今後、人工授精がうまく行われて、次の段階の飼育試験へと進んでいくことを願っています。

 

シジミの精子、卵子の確認作業の様子

シジミの精子、卵子の確認作業の様子

シジミの精子の顕微鏡写真

シジミの精子の顕微鏡写真

シジミの卵子の顕微鏡写真

シジミの卵子の顕微鏡写真

塩分濃度の調整作業

塩分濃度の調整作業

塩分を調整した湖水を入れたバットにシジミを入れる

塩分を調整した湖水を入れたバットにシジミを入れる

4種類の塩分濃度の異なるバットは、適温になるようヒーターで温められる

4種類の塩分濃度の異なるバットは、適温になるようヒーターで温められる

シジミの法制、放卵の開始を待つ関係者

シジミの放精、放卵の開始を待ってバットを見つめる関係者

 

 

 

シジミの陸上飼育施設の水槽等設置と現地説明が行われました

  シジミの陸上飼育試験のためのハウス建設工事が始まったことを7月27日にお知らせしていましたが、このほどハウスが完成し、8月28日(水)にシジミの産卵、ふ化、飼育のための水槽等の設置とこれに併せて報道関係者等に対する現地事業説明会が行われましたので、私も出かけて行って、作業の様子を見学しました。

  この事業は、これまで社内で陸上でのシジミ飼育実験を続けてきていた大福工業、高濃度酸素水供給・水質管理技術を有する松江土建、堅牢で安価な農業用ハウス建設の技術を有する株式会社フクダの地元企業三社に、宍道湖のシジミについて豊富な知識を有する宍道湖漁協斐川漁業会が加わり、それぞれの得意分野の知識、技術を持ち寄り、一緒になって事業実施組織を作り、出雲市を通じて財団法人地域総合整備財団の地域試験開発補助金を得て、取り組んでいるものです。

  場所は、私たちの住んでいる松江分地区の十四間川左岸河口部付近にあり、宍道湖の水を引いてシジミを飼育するのに最適の場所です。

  具体的な研究事業の内容としては、宍道湖のヤマトシジミの陸上飼育技術の確立という研究テーマの下、農業用ハウスの中に設けた水槽で、県外の企業が有するヤマトシジミや他の二枚貝の飼育、養殖に関する技術をもとに、地元松江・出雲が有するヤマトシジミに関する様々なノウハウ(シジミの生態、水温、塩分濃度や酸素濃度量等)を加えて、宍道湖産のヤマトシジミのふ化から成長まで一貫して行い、成長が早く、良質なヤマトシジミの陸上飼育技術の確立を目指しているということです。そして、陸上での成貝までの飼育だけではなく、飼育した稚貝を宍道湖に還元することで、シジミ漁というこの地域の重要な産業の活性化にも寄与したいとのことです。

  さらに、シジミの陸上飼育技術の確立だけではなく、ヤマトシジミを使った新しい健康食品の開発やシジミの貝殻に含まれるアラゴナイトと呼ばれる物質の利用など貝殻の有効活用についても同時に研究を進めていくとのことです。

  計画では、今週中にすべての水槽に十四間川の水と水温調整のための地下水を供給するための配管や酸素供給装置の接続等の作業を終え、来週には宍道湖漁協斐川漁業会によって宍道湖・十四間川で採取されたシジミの親貝が入れられ、さっそくシジミの人工授精に取り掛かるとのことです。

  長らく日本一の水揚げ高を誇っていた宍道湖のシジミも、漁獲量が激減し、ここ2年ほどは青森県十三湖に日本一の座を譲ってしまいました。今年はやや持ち直したという調査結果が公表されましたが、依然として厳しい状況に変わりないようです。是非ここでの研究が成功して、日本一の宍道湖のシジミが復活してほしいものと、地元の者として我々松江分自然環境倶楽部もこの取り組みを見守り、応援していきたいと思います。

 

シジミ陸上飼育施設全景(十四間川堤防上から撮影)

シジミ陸上飼育施設全景(十四間川堤防上から撮影)

シジミを飼育する水槽の設置作業の様子 水槽は、1700×1240×730mmの大きさで1010リットル入

シジミを飼育する水槽の設置・配管作業の様子
水槽は、1700×1240×730mmの大きさで1010リットル入

飼育するシジミに適度な濃度の酸素を含んだ水を送るための酸素発生装置

飼育するシジミに適度な濃度の酸素を含んだ水を送るための酸素発生装置

ハウス内の水槽に湖水を送るため十四間川に設置されたパイプ

ハウス内の水槽に湖水を送るため十四間川に設置された取水パイプ

報道関係者による取材の様子

報道関係者による取材の様子

 

 

 

第3回環境講演会を開催しました

  8月18日(日)午前10時から、松江分研修センターにおいて、環境講演会を開催いたしました。

  この講演会は、公益財団法人しまね自然と環境財団の環境保全活動助成金をいただいて、平成23年から毎年8月に開催しており、今年で第3回目を迎えました。

  松江分自然環境倶楽部では、倶楽部設立以来、地域住民の安全と暮らしを守っている十四間川堤防の毎月の漏水調査やヨシの植栽活動を実施し、また、今年からはヨシ植栽場所に漂着するゴミの回収を行うなど、十四間川の堤防と湖水環境を守るためのさまざまな取り組みを行ってきています。この講演会も、そうした活動の一環として、自分たちの住んでいる地域の成り立ちや自然、あるいは環境問題についてみんなで学んでいくことを目的として開催しているものです。

  第3回目となる今回は、野鳥の宝庫でもある宍道湖にやってくる水鳥の種類や生態、出雲平野、中海、宍道湖の成り立ち、宍道湖南岸から産出し、伝統工芸品出雲石灯籠として有名な来待石の特徴や新しい利用法などについて、3人の専門家からお話しをしていただきました。

  最初に、公益財団法人ホシザキグリーン財団事業課長の森茂晃氏から、「宍道湖西岸の水鳥」について講演をいただきました。

  森氏は、宍道湖西岸域に生息するカモ類やガン・ハクチョウ類、シギ・チドリ類や斐伊川・神戸川水系のヤマセミの繁殖実態調査、海鳥の油汚染調査など地域の鳥類の生息状況に関する調査、研究のほか、最近では、砂浜海岸で繁殖するシロチドリの生息数に注目した研究や島根県のレッドデータブック掲載種の生息実態調査に取り組んでおられ、講演では、こうした豊富な調査研究に基づいて、宍道湖西岸でみられる多くの鳥たちの種類や生態について、わかりやすくお話をいただきました。

  宍道湖周辺では、約240種の鳥が確認されており、そのうちきわめて稀なものを除いても、約160種もの多種類の鳥を身近に見ることができること、そして十四間川ではカモだけでも15種類程度を見ることができることやヨシやガマなどの水草や水田に営巣するバンが減少し、代わって20年位前には少なかった水面を泳いだり潜水したりして藻や甲殻類を食べるオオバンが増加してきていることなど、十四間川周辺にみられる鳥類について興味深い話がありました。

  続いて、大福工業株式会社環境部出雲環境技術センター研究員で、同社において島根県産ゼオライトの有効利用について研究をしておられる五石由美氏から「来待石のミクロな世界」と題し、宍道、来待周辺の地質、ゼオライトを多く含む来待石がどのようにしてできたのか、来待石の組織、構成する鉱物などについて、講演をいただきました。

  火山のマグマが地層深部で徐々に冷えて固まった花崗岩が風化し、砂粒大となったものと長石や石英の破片、これらの間を埋めるように存在するゼオライト(噴火により地下のマグマが上昇する際にガスの発泡により液体のマグマが粉砕され、微粒子となった火山ガラスが熱等により変性したもの)が堆積し、圧力によって石(堆積岩)となったものが来待石であり、中に含まれるゼオライトの吸着効果に着目した水質浄化等への活用も注目されていることなどが紹介されました。

  そして、最後に、認定NPO法人自然再生センター理事長でモニュメントミュージアム来待ストーン館長でもある島根大学名誉教授徳岡隆夫氏から、「来待石の秘密‐生い立ちと魅力を探る‐」と題してお話をいただきました。

  徳岡先生は、地質学が専門で、島根大学総合理工学部教授を退官後、認定NPO法人自然再生センターを立ち上げられ、宍道湖、中海などの汽水域の研究を続けられるとともに、中海・宍道湖の自然再生と環境保全に取り組んでおられ、松江分自然環境倶楽部設立以来様々な面でご指導、ご支援をいただいており、この講演会も3回連続でお話をいただくことになります。

  徳岡先生からは、最初に地球が誕生した約46億年前から現在に至るまでの地殻や気候の変動、生物の進化や盛衰の歴史について話があり、地球の歴史を1年の暦に表すと、ヒトが文明をもったのは、高々最後の1分間に過ぎず、現在地球上に暮らす人類が何をしてもよいということではなく、大きな視点で、現在や将来の地球環境を考える必要があるとの話があり、次いで、約11,000年前から現在までの斐伊川下流域、宍道湖、中海の地形の変遷について、図に基づき詳しく説明があり、宍道湖南の火山の活動によって、南岸部に花崗岩が風化堆積して生じた砂岩の来待石が堆積し、対岸の松江市大野町辺りにはもっと細かい粒子が運ばれて堆積してできた泥岩からなっていること、来待石は、石灯篭や狛犬などの工芸製品によく使われているが、ゼオライトをたくさん含むことからもっと多面的な利用が可能となり、現在様々な利用方法が検討されていること、今は利用されていない来待石層の下部にある白来待石の層は、100%近いゼオライトが含まれているものもあり、ゼオライトを利用するには大変有効なものであることなどの話がありました。

  この後、質問、意見交換が行われ、来待石の性質や宍道湖の水鳥の増加と餌となる水草の関係、シジミを食べる水鳥がいるのかなどについて活発な質問等があり、予定時間を30以上も超過して講演会を終了しました。

  なお、当日の講演内容等の詳細は、機関誌「葦の原」でお伝えする予定です。

 

森氏(左)の講演の模様

森氏(左)の講演の模様

 

五石氏(左)の講演の模様

五石氏(左)の講演の模様

 

徳岡氏の講演の模様

徳岡氏の講演の模様

 

講演を聴く参加者

講演を聴く参加者

 

 

2013年8月の漏水調査の報告

調査日時

2013 年(平成 25 年)8月11日(日) 午前8 時

天候

晴れ

調査結果

十四間川水位  83cm(前月:79cm)

漏水量   調査地点1 2,700ml/分(前月:3,800ml/分)

       調査地点2 600ml/分(前月:1,000ml/分)

  調査地点3   900ml/分(前月:1,200ml/分)

  調査地点4   300ml/分(前月:400ml/分)

  8月の漏水調査を11日(日)午前8時から行いました。連日の猛暑のなかでも雑草だけは元気で、6月にきれいに刈った堤防も元のとおり草に覆われてしまい、漏水調査も大変です。

  十四間川の水位は、83cmと依然高い値を保っていて、船着き場が冠水することが増えてきています。

  漏水の状況は、先月に比べると減少しました。前年に比べて、調査地点3の漏水量が多いのが少し気になります。   

漏水調査の様子 6月に刈った草がまた伸びて計測も大変

漏水調査の様子
6月に刈った草がまた伸びて計測も大変

  2011年1月以降の漏水調査データは、以下に掲載していますので、併せてご覧ください。(クリックすると別にウィンドウが開き、グラフが表示されます。)

[PDF]十四間川左岸堤防漏水調査データ(2011年1月~2013年8月) 

覆砂場所のシジミ生息状況調査を実施

  7月28日に行った魚の生息状況調査に続き、8月10日(土)朝6時から、覆砂場所におけるシジミの生息状況の調査を斐川漁業会の協力を得て実施しました。

  十四間川左岸には、昨年5月から今年3月にかけ、合計10,000㎥余りの覆砂が行われ、浅場が造成されていますが、これがシジミに対してどのような効果があるのか、果たして覆砂場所にシジミは生息しているのかを確認しようとするものです。

  調査は、覆砂場所の一番下流部と腹付盛土が終わる付近の2つの地点で、(1)底がメッシュになった砂を掻く小さなジョレンで覆砂をしたところの砂をすくい上げて、その中のシジミの稚貝等の生息状況を確認、(2)覆砂したところをシジミ漁に使う手掻きのジョレンで掻いて、シジミの生息状況を確認、(3)少し沖合の覆砂場所の先端部付近を船から掻いて、シジミの生息状況を確認するという方法で行いました。

  その結果、いずれの地点でも、浅場では1週間から10日前ぐらいに産卵受精し、着底したばかりと思われる2~3mmの小さなシジミから、5mm前後、10mm前後といった生育段階の異なるシジミがたくさん確認され、20~25mmの出荷可能なサイズのシジミもたくさん確認できました。とくに、腹付盛土付近の手掻きのジョレンの枠部には、底生移行時に分泌する足糸腺から分泌する足糸によってたくさんのシジミの稚貝が付着していました。このように産卵着底したばかりのものから25mmほどに成長したものまで、さまざまな大きさの貝がたくさん確認されたことから、覆砂場所において非常に多くの浮遊幼生が着底して順調に成長していっていることが確かめられたと思います。

  また、船で掻いた結果から、覆砂部分の先端部、前からある底泥との境目付近に特に多くのシジミが生息していることが分かりました。漁師さんに聞くと、シジミの色は、十四間川のシジミの特徴である茶色がかったものが多く、十四間川にいたものが繁殖したのであろうということでした。

  たまたま当日付けの山陰中央新報にも、シジミの生息環境改善のため、斐伊川河口の河道確保のため浚渫される砂約3万㎥を出雲市小境町付近の宍道湖西岸に覆砂することが大きく報じられていました。過去の宍道湖への覆砂でも硫化水素の発生を抑え、シジミの浮遊幼生が着底して生育できる良好な環境が保たれているということであり、十四間川の覆砂場所での今回の私たちの調査でも効果が確認されましたので、今回の大規模な覆砂によって生物の生息環境改善が図られ、シジミ等の増殖に繋がればと思います。また、覆砂とともに水辺(浅場)のヨシ帯を復活させることによって、さらに水質改善が図られ、昔の宍道湖の自然が蘇えればと思います。

  松江分自然環境倶楽部では、今後も継続してシジミの生息状況の調査など、引き続き覆砂やヨシの植栽の効果を確かめるための調査を実施していきたいと考えています。

調査の様子

調査の様子

小さなジョレンで覆砂場所の砂を掬い取り、砂の中のシジミの稚貝を確認

小さなジョレンで覆砂場所の砂を掬い取り、砂の中のシジミの稚貝を確認

砂の中で見つかったシジミ 足糸がついた着底直後の者から15mmくらいに育ったものまでさまざまなサイズのシジミを確認

砂の中で見つかったシジミ
足糸がついた着底直後の者から15mmくらいに育ったものまでさまざまなサイズのシジミを確認

浅場の手掻きによる調査の様子

浅場の手掻きによる調査の様子(腹付盛土終端付近)

浅場の手掻きによる調査の様子(覆砂場所の最下流部付近)

浅場の手掻きによる調査の様子(覆砂場所の最下流部付近)

手掻きのジョレンに入っていたシジミ(覆砂場所最下流部付近でとれたもの)

手掻きのジョレンに入っていたシジミ(覆砂場所最下流部付近でとれたもの)

覆砂場所先端部付近での船掻きの様子

覆砂場所先端部付近での船掻きの様子

船掻きで獲れたシジミ

船掻きで獲れたシジミ

船掻きのジョレンを引き上げたところ 砂とヘドロが層となっており、その中にたくさんのシジミがいることが分かる

船掻きのジョレンを引き上げたところ
砂とヘドロが層となっており、その中にたくさんのシジミがいることが分かる

手掻きのジョレン 枠に足糸を絡ませて着底直後のシジミの稚貝がびっしりとついている

手掻きのジョレン
枠に足糸を絡ませて着底直後のシジミの稚貝がびっしりとついている

ジョレンに付着したシジミの稚貝

ジョレンに付着したシジミの稚貝

ジョレンに付着したシジミの稚貝

ジョレンに付着したシジミの稚貝

覆砂場所の魚類調査を実施

  十四間川再生協議会でも覆砂の効果やWEPシステムによる高濃度酸素水供給の効果を大確かめるための魚介類の生息状況調査が行われていますが、このほど倶楽部でも独自に覆砂場所においてその効果を確かめるための調査を行いました。

  調査は、竹を細く割いて一升瓶を大きくしたような形のカゴにし、魚やエビなどが底の広い口からいったん入ったら出られないよう中に二段に漏斗状の返しを付けたウナギ筌(当地方ではウナギカゴと呼んでいる)10個を覆砂場所に浸け、翌日朝に引き上げて捕れた魚を調べるという方法で行いました。筌による漁は、主に底に棲む魚やエビ、カニなどが対象となります。ウナギを獲る漁師さんは、餌としてハチの子などを使うようですが、今回私たちは5個のカゴに魚肉ソーセージを切ったものを入れ、あとの5個には何も入れませんでした。

  7月28日(日)朝5時半から前日に沈めておいたカゴを引き上げた結果、残念ながらウナギの姿はありませんでしたが、体長約20cmの大型のウロハゼ、マハゼなどのハゼが49匹、手長エビが約30匹入っており、覆砂場所が魚やエビの棲み家になっていることが確認されました。調査が終わったあと、これらの魚やエビは船着き場から十四間川に放してやりました。

  倶楽部では、今後も独自にシジミの生息状況の調査など、引き続き覆砂の効果を確かめるための調査を実施していくこととしています。

ウナギ筌の中に餌を入れ、すぼまった部分に輪を嵌めて閉じる(7月27日)

ウナギ筌の中に餌を入れ、すぼまった部分に輪を嵌めて閉じる(7月27日)

長い竹竿の下から1m位のところに筌のひもを縛り付け、竹竿をさして川底に設置

長い竹竿の下から1m位のところに筌のひもを縛り付け、竹竿をさして川底に設置(7月27日)

筌の引上げ(7月28日)

筌の引上げ(7月28日)

筌の口の部分を閉じていた輪を外し、缶の中に獲物を移す(7月28日)

筌の口の部分を閉じていた輪を外し、缶の中に獲物を移す(7月28日)

筌の中に入っていたハゼやテナガエビ

筌の中に入っていたハゼやテナガエビ

捕れたハゼとテナガエビ この後すべて川に返した

捕れたハゼとテナガエビ
船着き場で調べたあとすべて川に返した

シジミの陸上飼育試験ハウスの工事始まる

  十四間川環境再生協議会のメンバーである株式会社フクダ、大福工業株式会社、松江土建株式会社が共同で実施するシジミの陸上飼育実験ハウスの建設工事が始まりました。現在、整地、測量を経て、ハウスの柱の組み立て作業が進められています。

  場所は十四間川河口付近の松江分地内の空き地で、ここに8m×16mの飼育ハウスを建て、飼育用の水槽を設置して、静岡県浜松市の佐鳴湖においてヤマトシジミの陸上繁殖に成功している辻野兼範氏(元浜松北高校教員、佐鳴湖シジミプロジェクト協議会副会長)などの知見も参考に、シジミの陸上飼育、飼育用餌の開発、機能性覆砂材利用の研究などが行われる予定です。

 

ヤマトシジミの陸上飼育研究ハウス建設場所 十四間川河口付近の空き地

ヤマトシジミの陸上飼育研究ハウス建設場所
十四間川河口付近の空き地

ヤマトシジミ飼育ハウス工事の様子

ヤマトシジミ飼育ハウス工事の様子

 

 

煙霧とpm2.5

  昨日に続き今日も県内は、pm2.5の値が上昇し、環境基準を大幅に超過するとともに煙霧が発生し、景色が白く霞みました。

  新聞によると、昨日は浜田市で午前9時から11時の平均値が60.0㎍、松江市で35.3㎍を記録し、松江市では視程が10㎞未満となる煙霧を観測したとされます。

  斐川平野でも昨日は山が霞んで見えなくなっていましたが、今日も同様に景色が白く霞む現象が発生し、夕方にはとくにひどくなり、旅伏山も全く見えなくなり、赤い夕陽が山の端に近づくにつれて次第に霞み、見えなくなってしまう程でした。島根県が公開している1時間ごとのpm2.5の値も、出雲では午後5時から61㎍、58㎍、53㎍、60㎍と健康の適切な保護を図るために維持されることが望ましい水準として定められている環境基準値35㎍を大きく超過しました。

  斐川平野では、ここのところ連日強い西風が吹いていますが、この強い風が中国からpm2.5を運んできたのではないかと思います。

  遠く離れた日本でこのような状況ですから、当の中国の大気汚染のひどさはいかばかりかと想像するとぞっとさせられます。 

煙霧に霞む白鳥水門(午後5時頃)

煙霧に霞む白鳥水門(午後5時頃)

10㎞あまりしか離れていない旅伏山も今日は全く見えない

10㎞あまりしか離れていない旅伏山も今日は全く見えない(午後5時頃)

夕陽も真っ赤に霞みながら沈んでいく

夕陽も真っ赤に霞みながら沈んでいく(午後7時頃)

山の端に近づくにつれて真っ赤だった夕日も霞んで見えなくなっていく

山の端に近づくにつれて真っ赤だった夕日も霞んで見えなくなっていく(午後7時頃)

 

十四間川の生物調査が開始される

  松江分自然環境倶楽部ほか7者が参加し結成した十四間川環境再生協議会では、十四間川において、覆砂による浅場造成、浅場へのヨシ植栽、浚渫窪地への高濃度酸素水供給、湖底撹拌、環境調査等十四間川の環境修復・再生のための様々な取り組みを行っていますが、昨年から今年春にかけて、延べ10,000㎥余りの覆砂を行い、また、6月から高濃度酸素水の供給を行うWEPシステムの連続運転を開始したところから、この効果を探るための生物調査が開始されました。

  7月23日(火)朝6時から、斐川漁業会の漁師さんの船で、十四間川環境再生協議会顧問であるホシザキグリーン財団の越川環境修復マネージャーによって、刺網による魚類調査、採泥器によるベントス(底生生物)、プランクトンの採集が行われ、私も同行し、調査の様子を見学させてもらいました。

  刺網は、覆砂場所付近、WEPシステムの設置されている5、6月頃から貧酸素状態となる水深約6mの窪地、その上流部の3か所に前日から仕掛けられていたものです。覆砂場所付近の浅い場所に仕掛けた網には、コノシロ、セイゴ、ボラ、フナなどの多くの種類の魚が数多くかかっていました。また、上流部に仕掛けた網には、多くのコノシロと数尾のセイゴがかかっていました。こちらは、ほとんど水面に近い網の上部に集中してかかっていました。一方、窪地に仕掛けた網には、中段にコノシロが1尾かかっていました。かかっていた位置からみて、底から2m位のところを泳いでいたものでしょうか。素人にはよく分かりませんが、普段貧酸素状態になっていると思われる高さであり、この位置に魚がいたことはWEPシステムの効果かなと感じられました。捕れたセイゴは持ち帰られ、大きさや食餌の内容などが詳細に調査されます。

  当日は、このほかにプランクトンの採集と底泥の採集が行われ、その後船を下りて岸から投網による浅場の魚類の生息状況調査も行われました。

  この調査は、WEPシステムの運転される貧酸素状態が続く10月頃まで定期的に実施されることとなっています。

十四間川右岸の船着き場から調査に出発 川の向こう側が松江分地区

十四間川右岸の船着き場から調査に出発
川の向こう側が松江分地区

浅場に仕掛けた刺網の引上げ 魚が次々に上がってくる

浅場に仕掛けた刺網の引上げ
魚が次々に上がってくる

引き上げられた刺網 手前から、窪地、覆砂場所付近、上流部 魚のかかる位置が異なっているのがよく分かる

引き上げられた刺網
手前から、窪地、覆砂場所付近、上流部に仕掛けた網(いずれも左が上部)
魚のかかる位置が異なっているのがよく分かる

採泥器による川底の泥の採取

採泥器による川底の泥の採取

水深6m位の窪地の泥 ほとんど真っ黒で貧酸素状態であることがわかる

水深6m位の窪地の泥
ほとんど真っ黒で貧酸素状態であることがわかる

窪地との境目辺りの泥 色は真っ黒ではなく酸素があることを示しており、中には1cm大のシジミが数個確認される

窪地との境目辺りの泥
色は真っ黒ではなく酸素があることを示しており、中には1cm大のシジミが数個確認される

十四間川のプランクトン 水が濁って見えるほど多くのプランクトンがいる

十四間川のプランクトン
水が濁って見えるほど多くのプランクトンがいる

窪地の底付近のプランクトン 表層ほどではないものの非常に多くのプランクトンがいる

窪地の底付近のプランクトン
表層ほどではないものの非常に多くのプランクトンがいる

船着場岸壁からすくったイサザアミ(オダエビ) 十四間川に大量に発生し、スズキやセイゴなどの餌となる

船着場岸壁からすくったイサザアミ(オダエビ)
十四間川に大量に発生し、スズキやセイゴなどの餌となる

 

イサザアミ(オダエビ)

イサザアミ(オダエビ)

 

7月のヨシ植栽場所清掃を実施

  7月7日(日)、漏水調査、ヨシの生育状況調査に併せて十四間川のヨシ植栽場所周辺のゴミの収集活動を行いました。

  今回は、蒸し暑さの一段落する夕方から今月の当番3人で漂着したゴミを集めました。先月は、16日に子どもたちによるゴミの回収活動を行っていますので、3週間後となりますが、今回もたくさんの発泡スチロールやペットボトル、弁当殻などが漂着していました。

  きれいにしてもきれいにしてもゴミは流れ着いて、やっていることが虚しく思えてきますが、止めたらこれまでの努力が意味なくなります。これからも粘り強く清掃活動を続けていきたいと考えています。

 

ヨシの間に流れ着いた発泡スチロール

ヨシの間に流れ着いた発泡スチロール

弁当殻や肥料の袋など

弁当殻や肥料の袋など

ペットボトルやビニール袋

ペットボトルやビニール袋

改修したゴミ

改修したゴミ