8月31日の山陰中央新報一面に、この夏は宍道湖のシジミの生育が順調であると紹介されていました。それによると、シジミの斃死は、湖水の酸素濃度や塩分濃度の低下、高水温などが重なって起こると考えられているが、この夏は宍道湖のシジミの斃死(へいし)がほとんど発生していず、稚貝の棲息状況も良好であり、資源量の回復に明るい兆しが見えるとのことです。今年は、ここ2年ほど低めだった塩分濃度が上昇したことから順調に産卵が誘発された結果と思われ、今後の高水温やアオコの大発生などの懸念材料もあるが、資源量は順調に回復しているとの県水産技術センター専門研究員のコメントが載っています。
一方、同日付の島根日日新聞の一面には、宍道湖と大橋川で29日に大量のアオコの発生が確認されたと国土交通省出雲河川事務所から発表があったことが紹介されています。アオコの大量発生は、三年連続であり、宍道湖の南北沿岸、東岸のほぼ全域と西岸の一部、大橋川で発生しており、特に松江市の末次から古曽志間は、膜状にアオコが湖面を覆っている状態(レベル4)、その他の場所は、うっすらと筋状に発生が認められるレベル2から表面全体に広がり所々パッチ状になっているレベル3の状態であるということです。アオコの正体は、ミクロキティスという藻で、一般に水温が高く塩分濃度が低い場合に発生しやすいとされているということです。実際に、9号線沿いを車で走っていると、松江に近づくにつれて、湖面が萌黄色に変わっていくのが確認できます。
塩分濃度から言えば、シジミの斃死の減少とアオコの大発生は、矛盾するように思われますが、これら二つの間にはタイムラグがあって、これからシジミに対して影響が出てくる可能性があるのかもしれません。専門家でない私にはよく分からないことなのですが、そういう点では、シジミの資源回復も単純に喜ぶわけにはいかなくて、これからよく注意していかなければならないのかもしれません。
アオコの発生は、松江市近辺が特にひどいということですが、はたして私たちの住んでいる宍道湖西岸、あるいは十四間川はどうなのか気になったので、早速今朝(9月2日)カメラを片手に出かけてみました。その結果は、以下の写真のとおりです。宍道湖西岸の岸辺には、アオコが押し寄せてきていて、萌黄色の渦を巻いたようになっており、護岸の石の表面にはペンキでもこぼしたようにべっとりと貼りついています。レベル2の上といったところでしょうか。一方の十四間川の方は、五右衛門川からの水の流れがあるためか、ごく少量のアオコが点々と浮いている程度で、川底の砂やそこを泳ぐ魚、砂に残された水鳥の足跡などもはっきりと見え、今はそう心配する必要もないと思われる状態です。
9月に入ってさすがに朝晩の気温も下がり、日中も風が涼しく感じられるようになってきました。これによって湖の水温も下がり、アオコの大発生が収まってくれることを願わずにはいられません。と同時に、アオコの発生は富栄養化が進んだ湖沼において発生するといわれていますので、私たち自身も環境に負荷を与えないように日ごろから注意、努力していかなければならないと思います。

宍道湖西岸に押し寄せたアオコ

護岸の石にはペンキを落としたようにべっとりとアオコが付着

十四間川河口から少し上流部。こちらはほとんどアオコは入っておらず、水もきれいで川底もよく見える